隣の人形
「しかし、これが強風というものか」
気持ち良さそうに、彼女はつよい風を浴びていた。
「生まれた時から、建物の中におった。人が作った風で人が作った太陽の光を浴びてな。諸々の抗体の注射と、アレルギーの薬、完璧に計算された食事、完璧に計算されたスキンシップ。スキンシップの時間は何時間で、それ以上は子供の脳に悪影響」
「なぁ、影有さん」
一応言うが俺は、影無である。
覚えてないらしい。
彼女は人とのスキンシップがいちぢるしく下手らしい。
「完璧な人間を作った所で、つまらんと思わんか」
完璧な人間。
俺は、間違えてたのだろうか。
完璧な姉を押し付けられた姉は。辛かったのかも知れない。
ここにいる少女と同じ、完璧などという幻想は、
苦痛でしかない。