隣の人形

「しかし、これが強風というものか」
気持ち良さそうに、彼女はつよい風を浴びていた。

「生まれた時から、建物の中におった。人が作った風で人が作った太陽の光を浴びてな。諸々の抗体の注射と、アレルギーの薬、完璧に計算された食事、完璧に計算されたスキンシップ。スキンシップの時間は何時間で、それ以上は子供の脳に悪影響」


「なぁ、影有さん」
一応言うが俺は、影無である。
覚えてないらしい。

彼女は人とのスキンシップがいちぢるしく下手らしい。

「完璧な人間を作った所で、つまらんと思わんか」

完璧な人間。
俺は、間違えてたのだろうか。
完璧な姉を押し付けられた姉は。辛かったのかも知れない。

ここにいる少女と同じ、完璧などという幻想は、
苦痛でしかない。
< 83 / 211 >

この作品をシェア

pagetop