隣の人形
感情制御装置というものが部屋には設置されている。
このヘルメットを被り、
怒りなら怒りのボタンを押す。
すると怒りの感情は制御される。
脳の部位に微力な電気を流し、感情を操作するものだと私は聞いていた。
『憂鬱』を押せば憂鬱が一時的に消える。
そして『やる気』を押せばやる気が出る。
あくまでも一時的であるが。
この装置を作ったのは、私より少し年上の少年だと言っていた。
一度その少年にあったことがある。
その少年は少し三基君に似ていたな。
そんなことを思うとチクリと痛みが走る。
これを使えば、
今感じている恋愛という感情は消える。
私達テクノ中の学生はこの装置を使い、
感情をコントロールする。
だから他人から怒りという感情を私は向けられたことがない。
母は、冷淡。
生徒もみな、無関心。
彼に始めて、優しさという感情を与えてもらった。
胸がシクシクとする。
私は、この感情を、
消したくない。
私はこの感情をコントロールしてしまいたくない。
この感情だけは、
機械で消したくなかった―。