泣き顔にサヨナラのキス

 
あたし達を乗せたエレベーターは、僅かな振動を伴って1Fへと降りていく。


「お前さ、なんでこんな日まで残業してんの?」


「……いやあの、孝太が五時過ぎに戻るって言ってたんで、一緒に行くつもりだったんですけど」


「は?あいつ、店に居たけど?」


え?


そう言った、原口係長を見上げた。


仕事の時と同じ真面目な顔で、とても冗談を言っているようには思えなかった。


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