泣き顔にサヨナラのキス
 

 
「ため息なんて吐いて、どうしたんだよ?」


そう言ったのは原口係長。

幹事の原口係長は最後に、皆の忘れ物をチェックしていた。


「別に、何もないです」


そそくさと立ち上がって、掛けていたコートに袖を通す。


バッグを手に取って、パンプスを履けば、いつもの仕事仕様のあたしだ。


大丈夫。何でもない。


ちょっと気分が沈んでいるだけ。



< 182 / 614 >

この作品をシェア

pagetop