泣き顔にサヨナラのキス
 

 
そんなことを言いながら、次の瞬間には、あたしの隣にふわりとやって来て「どこに行きたい?」と訊いてくる。


「出来れば、涼子さんのお店に」


そう答えたあたしに、原口係長はニヤリと笑った。


「言うと思った。会計済ませてくるから、伊藤課長と待ってろ」


原口係長は大きな手で、あたしの頭をガシガシ撫でてその場を後にした。


まるで犬にでもなった気分。


原口係長の手は温かくてホッとする。


そして、何よりその優しさが心に沁みた。


今、ひとりぼっちになるのは寂しかったから。




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