泣き顔にサヨナラのキス
 

 
そう言えば、伊藤課長って丸顔でおっとりとした雰囲気だけど、元はうちの花形部署所属だったとか。


つまり、バリバリの出世街道まっしぐらだった人。


なんでこんな人が利益率もあんまり良くない部署に居るのか不思議だった。



「野上さんは、よく頑張っていますよね」


「えっ!?あ、ありがとうございます」


いきなり話し掛けられて、慌てて返事をすると、原口係長がぷっと吹き出した。


「課長、野上は人の話聞いてないですから」


「そ、そんなこと無いです」


強く否定することも出来ず苦笑いのあたしに、伊藤課長はふっと表情を緩めた。


「マイペースは悪いことではありませんよ。

……あ、ちょっと失礼」


伊藤課長は席を立つと、内ポケットから携帯を取り出して外へと出ていった。


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