泣き顔にサヨナラのキス
促されるまま、ブカブカのパジャマに袖を通す。スーツはハンガーに掛けた。
確かに、ベッドは三人でも余裕で寝れるほどの大きさで。
原口係長は先にベッドに横になって、眠そうに目を擦っている。
「アリス、早く来いよ」
欠伸を噛み殺すようにつぶやく。
「……アリスって?」
「ん?俺が昔、可愛がっていた犬の名前……
よく一緒に寝てたんだよ」
布団を手のひらでパフパフと叩く。まるで犬でも呼ぶみたいに。