泣き顔にサヨナラのキス
好きだからこそ
孝太に合鍵を渡していたことを忘れていたわけじゃない。
だけどまさか、あたしの部屋に孝太が居るなんて、微塵も想っていなかった。
「おかえり、遅かったね」
あたしの気持ちを推し測るような孝太の声色に、心臓がギクリと音を立てる。
いや、そうじゃない。
後ろめたいからそう感じてしまうんだ。
こんな完全な朝帰りの現場を孝太に見られてしまうなんて。