泣き顔にサヨナラのキス
 

「だ、大丈夫ですか?
あたしが片付けますから、横になって休んで下さい」

「……悪いな」


原口係長の手から、買い物袋を奪うように受け取った。


触れた指先に、心臓が止まりそうになるのを隠して。


「リンゴ食べれますか?」顔も見れずに早口で捲し立てる。

「うん、多分。お前が剥いてくれるなら」

「じゃ、ソファーに座って待ってて下さい。直ぐに剥いてきます」

「ん、ありがとう」


原口係長に背中を向けてキッチンに入る。


道具は揃っているのに、使っていないみたい。全てが真新しいままだった。





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