泣き顔にサヨナラのキス


リンゴを拭いて皮を剥いた。この包丁、誰が買ったんだろう。なんて、そんな分かりきったことを考えてしまった。


チラッとソファーに座る原口係長を盗み見る。


随分痩せたなと思う。


早く元気になって下さいね。そうじゃないと、原口係長のことが気になってしまうから。


だから、早く……


「どうぞ」

リンゴを乗せたお皿を差し出すと、しばらく無言の原口係長。


「……ウサギじゃない」

「は?」









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