泣き顔にサヨナラのキス


そして、また困ったように笑う。


「だからって、来るなよ、バカ。俺は病人なんだ、熱があって具合が悪い」

「原口係長?」

「酷くダルくて、死にそうなんだよ」

「……あの」

「冷静な判断なんて、出来ない。だから、文句は言うな」

「えっ?」


掴まれた手首が痛かった。


それよりも……


苦しそうな原口係長の表情が胸を締め付ける。


原口係長の腕の中は、身を焦がすように熱いのに、どうしてだか、逃げ出すことが出来なかった。




< 402 / 614 >

この作品をシェア

pagetop