泣き顔にサヨナラのキス
だけど。
ある一点で原口係長の視線が釘付けになった。原口係長がそこを指で撫でて、ため息を落とす。
「酷い女」
言葉とは真逆の柔らかい表情で、あたしを見詰める。
「え?」
何のことかわからずに、黙り込むあたしに
「これ、キスマークだろ」と呆れたように一言。
――…キスマーク?
そんな!
昨夜、孝太につけられたことに気付かなかった。
「み、見ないで」
ブラウスを慌てて引き上げて、背中を向けた。