泣き顔にサヨナラのキス
中途半端な気持ちで、原口係長と二人で逢うんじゃなかった。
孝太との仲が不安定で寂しいからって、好意を持ってくれている原口係長に、甘えちゃいけなかったんだ。
そんなこと、少し考えればわかることなのに。
「早く良くなって下さい」
「ああ」
「二度と此処には来ません」
「そうしてくれ」
「ごめんなさい」
「……野上」
原口係長の声が弱々しい。背中を向けたままで、その言葉を受け止めていた。
振り向けなかった。これ以上、泣き顔ばかりを見せるわけにはいかないから。