泣き顔にサヨナラのキス


丁寧に巻かれた髪には、生ビールのジョッキなんて似合わないのに。


「本部に異動、おめでとうございます。一応、栄転なんですよね?」


一応って。毒は忘れていない山本さん。


「栄転かどうかは微妙だけど」

いや。多分、栄転じゃないな。


「さ、寂しいじゃないですか」


「よく言うよ」


あたしが居なくなれば、孝太とランチ行き放題じゃない。


諦めないって、そして、別れてくれって言ったくせに。


本当に、もう。



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