泣き顔にサヨナラのキス
ジョッキに手を伸ばし、またぐびぐびと生ビールを飲む山本さん。
「あたしとじゃ、ないですよ」
「わかってるわよ。それぐらい」
山本さんは、フンと鼻を鳴らして枝豆をつまんだ。
「だからですね、あたしが言いたいのは……」
「う、うん」
「孝太くんは、野上さんが好きなんだって。
あの時、心配させたくないって、孝太くんがあたしを部屋に置いて出ていった時、悔しかったけど。
孝太くんは、本気で野上さんのことが、好きなんだと想いました」
そう言った、山本さんの瞳が潤んで見えるのは気のせいだろうか。