泣き顔にサヨナラのキス


「野上さんが孝太くんの彼女なら、簡単に奪えると想っていました。この人のどこがいいんだろうって」


「……随分、はっきり言うよね。あたしだって、傷つくんですけど」


「いーじゃないですか、別にそれぐらい」


頬杖ついて、ため息を吐く。


「あのね、」


「とにかく、別れて欲しくないんですよ」


「はっ?」


また山本さんに睨まれた。


「あたしじゃ、ダメなんだって、わかったから」


少しの間があって「それに、野上さんのこと、嫌いじゃないですから」と、山本さんは小さな声で呟いた。




< 418 / 614 >

この作品をシェア

pagetop