泣き顔にサヨナラのキス
頭を抱えて、「何をしてるんですか」と呆れたように、あたしを睨む。
「ごめん」
「本人に謝ったらどうですか?ここで、今から」
……はい?
「もうすぐ、来ますよ。孝太くん」
「はっ?」
「呼んじゃいました」
いつの間に……
「別れないで下さいよ。
孝太くんがフリーになったら、あたしまた、イヤな女になりそうで。
あんな自分には、もうなりたくないんです」
そう言った山本さんは、どこか吹っ切れたような、それでいて寂しそうな笑顔を見せた。