泣き顔にサヨナラのキス
どうしよう。
ザワザワとした店内の話し声が、途端に静まり返った気がしてしまう。
あたしの視線を追って振り返った山本さんが「お疲れ、孝太くん」と手を振った。
その声に応えるように柔らかく微笑む。
「珍しいね、二人で呑んでるなんてさ」
異動の件で気まずくなって、殆ど会話らしい会話も交わしていないあたし達。
戸惑っているのは、あたしだけなのかな。
孝太は、あたしの隣に当たり前のように腰を下ろして「何時から呑んでるの?」と、山本さんに言葉を掛ける。