泣き顔にサヨナラのキス
結局、会議が終わったのは九時過ぎだった。
孝太を待たせる訳にもいかず、会議中にメールで断っていた。
だけど、会社を出るとやっぱり呑みたくなって、地下鉄を途中で降りて涼子さんのお店に向かう。
一人で外で飲むなんて、久しぶりだな。
少しだけドキドキしながら引き戸を開けて、仄かに香る花の匂いに癒されながら中へと進む。
「あら、野上さんいらっしゃい」
涼子さんの顔がぱっと明るくなった。
「お久しぶりです」
会釈すると「どうぞ、こちらに」笑顔の後に、目の前のカウンター席に促された。