泣き顔にサヨナラのキス
白く細い指からおしぼりが差し出された。
「今日は、けんちゃんと待ち合わせ?」
「いえ、一人で少し呑みたくなって」
「そう。あ、けんちゃんから聞いたわよ。栄転したんですって?これ、私からお祝いね」
「えーっ、いいんですか?ありがとうございます」
瓶ビールを御酌してもらって喉を潤した。
あー美味しい。
うん、幸せ。
「いつ見ても、いい呑みっぷりね」
そう言って微笑んだ涼子さんは、次の瞬間驚いたように目を見開いた。
「あら、けんちゃん。いらっしゃい」