泣き顔にサヨナラのキス
――…えっ?
振り向いた先には、原口係長が立っていた。
「よっ、野上。一人か?」
「あ、はい」
「じゃ、隣座っても大丈夫だな」
久しぶりに見る原口係長は、以前よりずっと大人の男の雰囲気になっていて、何故だかドキドキしてしまった。
「お、お疲れです」
「お疲れ。今来たのか?」
「はい。会議が長引いて」
フッと失笑して「会議ばかりで大変だな」とタバコに火をつける。
煙をため息と一緒にゆっくりと吐き出して、そしてあたしを見詰めた。