泣き顔にサヨナラのキス
程なくして孝太が「ただいま~」と帰ってきた。
「お、お帰り」
微妙な空気で出迎えてしまったけど、孝太はそれには気が付いていないみたい。
このシチュエーションって、そのまま新婚さんじゃないの?と、想うのはあたしだけなんだろうけど。
スーツの上着を脱いでハンガーに掛ける孝太をぼんやりと見ていた。
「何?」孝太の声は何も考えていないみたいに明るい。
だから「なんでもないよ」としか言えなかった。