泣き顔にサヨナラのキス
孝太の横顔をじっと見詰めた。
真っ直ぐな瞳で真剣に仕事の話をしている。
「それだったら、明日早めに出社して見積もりを変更しておきます。いえ、いいですよ。それぐらい……」
まだ話は続くのかな。手の中のメモは、握り締めると音も無く皺くちゃになった。
「はい。了解しました。お疲れです」
電話を切った孝太は、「あー」と声を出してうな垂れた。
「どうしたの?」
「やられたよ。古賀さんに仕事、押し付けられた。あの人、そういうのだけは上手いんだよね」
「……大変だね」
「断れない自分も悪いけどさ。あぁ、明日、早起き決定だ」