泣き顔にサヨナラのキス
        

「ちょっと、」


孝太はあたしの言葉を無視して玄関へと歩いていく。


その後姿を慌てて追いかけると、孝太は靴を履き終えてドアに手を掛けたところだった。


「孝太」


喧嘩してしまったことが悲しくて声が震えた。


「明日、七時過ぎに梶間食堂に来て」


振り返りもせずそれだけ言うと、ドアは閉まって孝太は帰っていった。




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