泣き顔にサヨナラのキス
お客さんも増えてきて、だんだんと席が埋まっていく。
一人でテーブル席に居ることが気まずくなった頃、孝太がお店に入ってきた。
あたしを見付けると、目を逸らしもしないで、真っ直ぐに歩いてくる。
この瞬間が、堪らなく好き。
少しだけ、孝太が微笑んだような気がした。
だから、あたしも。
条件反射のように「お疲れ」と声を掛けた。
孝太があたしの前の席に座った。
「お疲れ、カナ。待った?」
「あ、うん。少しね」
「呑みながら、待っていたら良かったのに」