泣き顔にサヨナラのキス
背後から「待ってよ」と言いながら、孝太が追いかけてくる。
振り向かなくても、笑っているのがわかるから。あたしは早歩きで距離をとる。
凄く馬鹿にされた気分なの、それぐらい気付きなさいよ。
「カナ」
「……」
「待ってよ。もしかして、怒った?」
「……」
「なんで?」
なんで?その言葉に立ち止まって振り向いた。どうして、そんなこともわからないの?
キッと睨むと、キョトンとした表情の孝太が急に優しい顔になった。