泣き顔にサヨナラのキス
こんなに綺麗に泣く人を初めて見た。
抱きしめたい、そんな感情を圧し殺す。
「俺は……」
「お願い健治君、中途半端な気持ちで引き留めないで」
「亜美……」
何も言えなかった。迷っていないわけじゃない。
ただ、俺では亜美を幸せに出来ないと想った。
亜美がフッと笑みを溢した。
「健治君、私の目を見て好きって言って?」
最後だから、と。
「亜美が好き、だった」
亜美は「うん」と頷いて、二人で住むはずだった部屋から出ていった。