泣き顔にサヨナラのキス


好き、だった。

いや、好きだと、想っていた。


二年も付き合っていたのに、俺は何もわかっていなかった。


亜美がどれだけ寂しかったのか。何故、我が儘も言わずに我慢していたのか。


指輪を渡した時の亜美の笑顔が胸に沁みる。

亜美は待っていたんだ。俺が君に恋をする日を。


今なら、わかるよ。



急に酒に酔いたくなった。


「滅多に手に入らない日本酒があるの」

涼子の言葉に頷いた。





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