泣き顔にサヨナラのキス
切り子のグラスに注がれた冷酒を口に含む。
すっきりとした味わいが、心地好く広がっていく。
今夜は、飲み過ぎてしまいそうだ。
「私も頂こうかな」
涼子が手酌で注ごうとするから、手の中の小瓶を取り上げた。
「ふふ、ありがとう」
「いつも、店で飲んでいるのか?」
「ううん。飲まないわよ。今夜は、特別……」
「ん?なんで?」
「だって、けんちゃん。もう、店には来てくれないでしょう?」
少しだけ寂しそうに、そして柔らかく涼子が微笑んだ。