泣き顔にサヨナラのキス
「どうかな……」煙草に火を点けて、ゆっくりと吸い込んだ。
ここには、もう来ない。そうかもしれない。
「けんちゃんと一緒に、お酒を飲んでみたかったの」
「別に酒ぐらい、いつだって」
「わかってないのね」と涼子が笑う。
手元の小瓶は空になってしまった。
「けんちゃん。もう少し、お酒付き合ってね」
そう言って、冷酒の瓶を二本手にして、涼子が俺の横に腰掛けた。
「酔っても、知らないぞ」
「心配しないで、子供じゃないのよ」
「いや、俺が、だよ」