泣き顔にサヨナラのキス
ゆらゆらと立ち上がるタバコの煙が、迷っている自分の心のように見えた。
何を、迷う?
このまま、成り行きで涼子と……
そんな事を考えている自分が酷く滑稽に想えた。
「けんちゃん」
「ん?」タバコを消して、涼子に視線を移す。
艶やかな唇がゆっくりと開いた。
「けんちゃんが、好き」
「あぁ、……うん」
「直ぐじゃなくていいの。落ち着いたら、私の事を考えて欲しいの」
「そう、だな」
冷酒を口に運びながら、言葉を濁した。