群青の月
「あ、そうだ。蝋燭を消す時、“心の中で願い事を唱えたら叶う”って知ってるか?」


「は?」


「どうせなら、願い事を唱えながら消せよ」


「バッカじゃないの?」


あたしは思い切り眉をしかめて言い放った後、自棄(ヤケ)になってケーキの上で赤々と燃えている二本の太い蝋燭に向かって、勢いよく息を吹き掛けた。


その瞬間、火は消えた。


「柚葉」


冬夜は口元を少しだけ緩めて、あたしを呼んだ後…


「誕生日おめでとう」


優しい眼差しで、その言葉の意味を噛み締めるように言った。


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