群青の月
何年振りだったっけ……


こんな風にバースデーケーキを目の前にして、誰かに誕生日を祝って貰ったのは……


あぁ、そっか……


これが初めてじゃん……


「柚葉?」


感傷に浸(ヒタ)るようにケーキを見つめていたあたしは、冬夜の声でハッとした。


「どうした?」


「別に……」


「願い事、唱えたか?」


「そんな訳ないじゃん」


平静を装って答えてみたけど、何とも言えない感情が心をざわつかせる。


そんなあたしを余所に、冬夜がケーキにナイフを入れた。


< 112 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop