群青の月
予想通り、柚葉はケーキの先端にフォークを突き刺して、また黙々と食べ始めた。


「美味いか?」


彼女は、笑顔で訊いた俺にチラッと視線を送ったかと思うと、面倒臭そうにため息を吐いてから口を開いた。


「普通……」


「そうか」


柚葉の答えを聞いた途端に口元を緩めてしまったのは、彼女の言葉に喜びを感じたから…。


『普通』と言う言葉は、たぶん柚葉にとっては褒め言葉だ。


俺は、まだたった数時間しか一緒に過ごしていない女の事をそんな風に都合良く解釈をして、バカみたいな自己満足に浸っていた。


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