群青の月
「行くな……」


苦しげに吐き出された言葉に、反射的に眉をしかめる。


何言ってんの?


呆れながら心の中で呟いて、大きなため息をついた。


「あたし、お金稼がなきゃいけないから」


自分の発した冷たい声が、リビングに落ちていく。


その直後、あたし達は静寂(セイジャク)に包まれた。


カチカチと響く時計の秒針と、どこからか聞こえて来る車のエンジン音。


聞き慣れた音達が、やけに耳障りな雑音に思えて…


僅かな苛立ちを感じながら、あたしの手首を掴む冬夜の手を強引に振り払った。


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