群青の月
「いくらだっ!?」


歩き出そうとしたあたしの足を、その言葉が止めた。


怪訝な気持ちを抱きながら振り返ると、冬夜は今までで一番真剣な表情をしているように見えた。


「……いくらだ?」


「は?」


もう一度同じ事を訊いた冬夜に、眉をグッと寄せる。


「……俺が払うよ、お前の仕事分の金」


戸惑いを捨て切れないような、どこか控えめな言い方だったけど…


そう言った冬夜の瞳は、やっぱりすごく真っ直ぐで真剣だった。


あたしは目を見開いたまま、何も言えなかった。


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