群青の月
「柚葉……」


名前を呼ばれた瞬間、背後に人の気配を感じてハッとした。


閉じた携帯を、慌ててデニムのショートパンツのポケットに押し込む。


「……何?」


いつもと同じように冷たい口調で訊きながら、ゆっくりと振り返った。


「出掛ける」


その言葉と同時に差し出された手を一瞥して、目の前の相手に視線を遣る。


「どこに?」


あたしが眉を小さく寄せると、みるみるうちに相手の顔に怒りの色が加わった。


「……何なの、その顔はっ!!そんな事、アンタには関係ないだろっ!!」


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