群青の月
三万円を手にしたあたしは、自分の事を“母親”だと言う相手に、それを差し出した。


「たったこれだけ……」


無駄に厚化粧の顔が歪んで、真っ赤な口紅を差した口元から不満そうな言葉が漏れた。


「そう言われても、今はそれだけしかないから……」


ため息混じりに小さく告げると、母が訝しげに眉を寄せた。


「まぁいいわ……。その代わり、明日もまた出しなさいよ」


さっきよりも落ち着いた口調の母は、派手な洋服に身を包んでいる自分の姿を鏡でチェックしている。


程なくして、母は家を出て行った。


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