群青の月
不意に目の前に人の気配を感じて、ゆっくりと顔を上げた。


「……君、こんな所で何してるの?」


目が合った男は真面目で爽やかそうな外見で、その雰囲気に似つかわしい柔らかい口調で話し掛けて来た。


だけど…


「冷やかしならいらないから」


この男(ヒト)も他の男達と同じようにしか思えなくて、咥えていたタバコを携帯灰皿に押し込みながら淡々と返す。


すると、男は厭(イヤ)らしさを覗かせるように、口元をゆっくりと緩めた。


そしてその直後、あたしの手を強引に引いて大通りに向かって歩き始めた。


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