群青の月
煩い男を無視してソファーに腰を下ろし、バッグからタバコを取り出した。


「あ、吸わないで。俺、そのタバコ嫌いなんだ」


直後に飛んで来た言葉で瞬時に芽生えた大きな苛立ちが、充分過ぎる程に募った憂鬱と混ざる。


二つの負の感情は、あたしの心の中を支配するようにのさばった。


「ねぇ、それよりさ……」


隣に座った男は、あたしから取り上げたタバコを無造作に放り投げて、体を密着させて来た。


その瞬間…


背中に感じたゾクリとした感覚が全身を這(ハ)うように広がっていき、体がビクリと強張った。


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