群青の月
「……吐……く……」


すぐに落ち着いたように見えた柚葉は、その一言をキッカケにまた噎(ム)せ出した。


「おい、大丈夫か?」


慌てて柚葉の体を降ろすと、彼女はその場にうずくまってしまった。


「我慢するな……」


俺には、苦しそうにしている柚葉の背中をさする事しか出来なくて…


自分の無力さを痛感しながらも、彼女の様子を窺(ウカガ)い続ける。


結局、数分しても柚葉が嘔吐する事は無くて…


何とか立てるようになった彼女を連れて、目の前の大通りでタクシーを拾った。


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