群青の月
マンションの前で俺達を下ろした運転手は、車で数分の距離なのにタクシーを使った事が不満だったのか、無愛想な表情のままドアを閉めた。


俺は自分で歩けると言った柚葉の言葉を無視し、今度は彼女の体を横抱きした。


「降ろして……」


「ダメだ。別に何もしねぇから、大人しくしてろって」


柚葉は抵抗を見せながらも、家に来る事自体を拒む様子が無い。


エントランスに入った時、照明に照らされた彼女の顔の青白さが益々際立って…


言葉に出来ない程の大きな不安を感じ、同時に胸の奥が酷く痛んだ。


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