群青の月
足元に落ちた缶から飛び散ったビールがデニムの裾を濡らし、足首の辺りにもその感触が伝わって来る。


「聞いてるよ……」


ため息混じりに缶を拾って、すぐ傍のキッチンに置いた。


「五万!」


母は舌打ちをした後、声を荒げながら手を出した。


考えるよりも先に、思わず眉を寄せてしまう。


「何だよ、その顔はっ……!昨日帰って来なかったんだから、それくらい当たり前だろっ!?」


口調がきつくなった母に、言い返す気力も失くなる。


あたしは眉を寄せながら財布から五万円を抜いて、無言でそれを差し出した。


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