群青の月
母は電話を済ませたのと同時に立ち上がって、いそいそと身支度を整え始めた。


マスカラを塗りたくった睫毛(マツゲ)や、真っ赤な口紅を差した唇。


その顔に、いつも嫌と言うくらいの嫌悪感を抱く。


そんな母の姿を見たくないと思っていても、狭いこの部屋の中ではどうしても視界に入ってしまう。


だから…


せめて、母の顔を見るのが最小限で済むようにと出来るだけ視線を逸らし、母の機嫌を損ねないように部屋を片付けていく。


しばらくして片付けを終えた頃、ちょうど支度を済ませた母が鼻歌混じりに玄関に向かった。


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