群青の月
「あっ!」


ハイヒールを履いてからドアを開けた母が、声を上げながら振り返った。


「別にアンタは帰って来なくてもいいんだけど、ちゃんとお金だけは置いときなさいよ?今日だって、アンタのせいで今まで出掛けられなかったんだから……」


その言葉に眉を寄せると、母はあたしをグッと睨み付けた。


「返事は?へ・ん・じ!」


蔑(サゲス)む視線を向ける母から、小さな抵抗で視線を逸らす。


「……わかったから」


不服な感情がこもったあたしの返事を聞いた母は、当てつけがましく舌打ちをしてからドアを閉めた。


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