群青の月
◆Side‥冬夜
【Side‥冬夜】
「おかえり」
いつものように微笑みを浮かべ、柚葉を迎え入れる。
すると、彼女が憂鬱そうな表情のまま視線を逸らした。
柚葉は基本的に冷たい態度しか取らないけど、一言も話さずに部屋の中に入ってしまう事は、今までに一度も無かった気がする。
後を追ってリビングに行くと、彼女は既にソファーに腰を下ろしてタバコを吸っていた。
大嫌いなデモンストレーターのバイトのせいで、疲れているだけなのかもしれない。
だけど…
憂いを含むその表情には、何かもっと別の理由があるように見えた――…。