群青の月
「とりあえず乾杯しようぜ」


「いや、だから別にいいってば……」


笑顔を見せた俺に、女が心底呆れたように眉をしかめた。


「まぁいいから、いいから。ほら」


それでも笑顔を向けて促す俺に、彼女は諦める事にしたのかもしれない。


渋々、と言う感じの顔で、細い指先でタブを開けた。


俺がビールを差し出すと、女も仕方ないと言わんばかりの表情で持っていたビールを軽く上げた。


「じゃあ、誕生日おめでとう!」


俺は満面に笑みを浮かべ、二つの缶をコンッと軽快に鳴らした――…。


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