群青の月
「桂子(ケイコ)、いるか〜?」


応答する暇も無く勝手にドアが開いて、低い声が響いた。


「はいは〜い!もうちょっとだけ待って〜!」


途端に母の機嫌が良くなった事が、その声音(コワネ)でわかって…


何事も無かったかのように振る舞う態度に、虫酸(ムシズ)が走る。


「……もう……帰って来なきゃいいのに……」


蚊の鳴くような声で零したあたしの言葉を、母はちゃんと聞き取ったみたい。


「は!?アンタ、今何て言った?」


間髪を入れずに、母があたしの胸倉(ムナグラ)を掴んだ。


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