群青の月
冷めた心で母を見ていると、不意に母がフッと笑った。


「……アンタって、本当に根っからのバカなのね」


鼻で笑った母は、何かを企(タクラ)むように口元を緩めながら玄関先に視線を遣る。


「ねぇ!この子、好きにしていいわよ」


「え?マジ!?」


「いいのかよ!?」


満面の笑みの母に返って来た返事は、二人分の男の声だった。


てっきり一人しかいないと思っていたあたしは、予想していなかった状況と母の言葉に目を見開いてしまう。


「うん。この子、私の子なんだけど、もう全然可愛くなくてさぁ……」


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