群青の月

◆Side‥冬夜


【Side‥冬夜】



ビルが建ち並ぶ大通りから一本入った、薄暗い路地裏。


そこに、柚葉はいた。


「柚葉っ!!」


柚葉に気付いた俺が大声で呼ぶと、スナックらしき店の看板の傍(カタワ)らで蹲っていた彼女が、全身をビクリと強張らせた。


「大丈夫か?」


状況が把握出来ないまま訊いた俺は、すぐにそんな質問をした事を後悔する。


顔を上げた柚葉は、まるで何かに怯えるように酷く震えていて…


「お前……」


彼女の額の左側には僅かな血が流れた痕があり、その瞳はこの世の全てに落胆してしまったように見えたから――…。


< 394 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop