群青の月
◆Side‥冬夜
【Side‥冬夜】
ビルが建ち並ぶ大通りから一本入った、薄暗い路地裏。
そこに、柚葉はいた。
「柚葉っ!!」
柚葉に気付いた俺が大声で呼ぶと、スナックらしき店の看板の傍(カタワ)らで蹲っていた彼女が、全身をビクリと強張らせた。
「大丈夫か?」
状況が把握出来ないまま訊いた俺は、すぐにそんな質問をした事を後悔する。
顔を上げた柚葉は、まるで何かに怯えるように酷く震えていて…
「お前……」
彼女の額の左側には僅かな血が流れた痕があり、その瞳はこの世の全てに落胆してしまったように見えたから――…。